『人を助けるとはどういうことか HELPING』
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p49
信頼には社会経済学から由来する二つの要素がある。他人を信じるとは、次の二つを意味する。
1.その人間との関係の中で、自分がどんな価値を主張しても、理解され、受け入れてもらえること
2.相手が自分を利用したり、打ち明けた情報を自分の不利になるように用いたりしないと思うこと
p71
クライアントが陥りやすい五つの罠
1.最初の不信感
2.安堵と、支援者への依存や従属
3.支援の代わりに、注目や安心感、妥当性の確認を求めること
4.憤慨したり防衛的になったりすること
5.ステレオタイプ化、非現実的な期待、(対人)知覚の転移
p77
支援者が陥りやすい六つの罠
次に述べる六つの行動的反応や、感情的反応は、自分は一段高い位置にいるとか、自分にはほかの人間が必要としている見識があるという感情から生まれたものだ。
1.時期尚早に知恵を与える
あまりにも早く助言を与えれば、クライアントの立場をさらに下に置くことになる。この反応は、提示された問題が真の問題だという支援者の思い込みも暗示している。クライアントが代わりの問題を提示し、自分を試しているだけだという可能性を支援者は無視しているのだ。
・「結構。わかりましたよ……あなたの取るべき行動は……」
・「簡単ですよ。これから述べることを実行するだけでいいんです……」
・「僕がそんな状況にいたときにやったことを話させてくれ」
2.防衛的な態度にさらに圧力をかけて対応する
支援者はクライアントが本当の問題を打ち明けたと思うことが多い。そして、クライアントには提供された解決策をやり通すだけのスキルも能力もあると思い込んでしまう。ひとたびこうした罠に支援者が陥ると、どんな助言でも提案でも正しいと、クライアントを説得したくてたまらなくなる。その結果、理解してもらうまで議論や説明をする必要に迫られるのだ。
・「私の提案を理解していないようですね。もう一度説明させてください。」
・「あなたが渋るのはもっともですが、だからこそ、私の提案が役に立つんです」
・「きみは僕の話を聞いていないね。僕を信じてくれ。それをやってみるんだ」
ひとたびこうした反応を示すと、引き下がるのはいっそう難しくなる。引き下がったら、支援者は面目を失うように感じるからだ。そこで支援者は、クライアントには実のところ理解する能力がないと結論づけるだろう。クライアントが本当は支援を求めていないのだとか、この関係にさらにエネルギーを注ぐ価値はないといった判断を下すに違いない。
3.問題を受け入れ、(相手が)依存してくることに過剰反応する
支援者の役割をすぐさま引き受けて自身をみなぎらせている人には、助けが得られるかどうかも分からないうちにクライアントは依存してしまう。
・「あなたの話を聞いて、私が力になれると革新しています。さあ、取りかかりましょう」
・「あなたの問題は理解しています。一緒に取り組めると思いますよ」
・「あなたを助けられるでしょう。それには以下のことをやってください」
4.支援と安心感を与える
支援することが適切でなく、クライアントの地位の低さを助長してしまう場合もある。状況を合理的に評価することと、クライアントが何を言おうと支えになることの間には微妙な差がある。
・「気の毒に。心からきみに同情するよ。大変だったな」
・「きみが納得できることを何でもやりたまえ。僕はきみの味方だよ」
・「あなたの計画はうまくいくと思いますよ。しかし、だめだとしても、あなたの責任ではありません」
5.距離を置いて支援者の役割を果たしがらない
これは最もわかりにくい罠だろう。支援者は客観的であろうとする努力を意識しない場合が多いからだ。また、さまざまな罠を避けようとして、感情的な距離をかなり置くため、まったく関わりたくないという気持ちを伝えてしまう。感情面での隔たりは、公式なプロの支援が求められるときには適切だと思われる場合が多い。支援者が客観的だというイメージを強めるからである。だが友人同士のように非公式の状況では、同様に距離を置いた態度を示されると、こんなメッセージを伝えていると思われかねない。「あなたの問題にまったく関わりたくないんです」と。つまり支援者は、支援が本当に必要なときに人間関係が築かれるよう、客観性と関わりとのちょうどよいバランスを見つけるというジレンマに陥るのだ。
・「どんなふうに手助けしたらいいか、私は本当にしらないんですよ」
・「私にはわからないんですが……。次の○○を試してみたらどうでしょうか……」
・「これについては別の機会に話しませんか」
・「このことを○○と話しましたか。彼なら助けになってくれるかもしれません」
こうした無関心な態度が現れるのはなぜだろうか。心理学的に最もありそうな理由は、クライアントが感じたり経験したりしていることをもっと奥深く探れば、支援者は自分の見解を変える羽目になる可能性を意識的にせよ無意識にせよ、わかっているからだということだ。
中略
クライアントの話に心から耳を傾けることによって、支援者は相手に地位と重要性を与える。そして、クライアントによる状況の分析が価値あるものだというメッセージを伝えるのだ。支援というものが、影響を与えることの一つの形だと考えるなら、自分が影響されてもかまわない場合しか他人に影響を与えられない、という原則は極めて適切だ。
6.ステレオタイプ化、事前の期待、逆転い、投影
支援者は過去の経験に基づいたすべてのものに左右されやすい。以前関わった誰かと似ているクライアントであれば、支援者は無意識のうちに目の前の相手を過去のクライアントと同じように扱うかもしれない。
P85 @3
支援関係を築くことの意味
支援関係を築くとは、突き止めた罠を認識して避け、修復することを意味している。
p91.
支援者が知らない五つのこと
1.クライアントは情報や助言、あるいは訊ねられた質問を理解できるだろうか
2.クライアントは支援者の提案に従えるだけの知識やスキルを備えているだろうか
3.クライアントの本当のモチベーションは何か
4.クライアントのおかれた状況はどんなものか
5.クライアントは過去の経験から、どんな期待や固定概念、恐怖心を持つようになるか
p94
クライアントが知らない五つのこと
1.支援者には助けを与えるだけの知識やスキル、モチベーションがあるか
2.はこの人に助けを求めれば、どんな結果が得られるか
3.この支援者は信用できるか。状況を利用して何かを不当に売りつけたり強制したりする人ではないだろうか
4.クライアントとして、私は提案されたことを実行できるだろうか
5.支援を受け入れると金銭面や感情面、また社会的な面でどれだけの対価を払うことになるだろうか
p98
役割を選択する
1.情報やサービスを提供する専門家
2.診断して、処方箋を出す医師
3.公平な関係を築き、どんな支援が必要か明らかにするプロセス・コンサルタント
p99
専門家の役割
P100
専門家の役割が本当に助けとなる可能性は、以下の条件が満たされるかどうかによる。
1.クライアントが問題を正しく診断しているかどうか
2.クライアントがこの問題を支援者ときちんと話しているかどうか
3.支援者には情報屋サービスを提供する能力があると、クライアントが的確に評価しているかどうか
4.支援者にそうした情報を集めさせることや、支援者が進める改革を実行することを、クライアントがよく考えているかどうか
5.客観的に分析でき、クライアントが利用できる情報に落とし込める外的現実があるかどうか
p103
医師の役割
P107
医師としての役割がどの程度成功するかは、以下の点にかかっている。
1.クライアントが正確な情報を明かす気があるか
2.クライアントが診断や処方を受け入れ、信じるかどうか
3.診断のプロセスによる結果が正確に理解されて、受け入れられるかどうか
4.進められた変化をクライアントが実行に移せるかどうか
5.クライアントが依存心を強めた結果が、最終的な解決策の助けとなるのか、妨げになるのか
プロセス・コンサルタントの役割 p108
P111
プロセス・コンサルタントの役割の適応は、以下のような前提に基づいている。
1.クライアントというものは経営者であれ、友人や同僚であれ、あるいは学生や配偶者、子どもなどでっあも、何がほんとうにうまくいっていないのか、実際の問題が何かを診断する上で、どんな助けが必要かを知らない場合が多い。しかし、問題を抱えて生きていくのはクライアント自身だけなのだ。
2.クライアントは、コンサルタントどんな支援を与えてくれるのかをわかっていない場合が多い。どのような助けを自分が求めているかを知るためのガイダンスが必要だ。
3.クライアントの大半は物事を改善しようという意図を持っている。だが、何をどのように改善するかを見極めるには、支援が必要だ。
4.自分が置かれた状況で何が最終的に効果をあげるかがわかるのは、クライアントだけだ。
5.自分自身で問題を見抜いて対応策を考えないかぎり、クライアントが解決方法を実行に移す可能性は低い。また、そうした問題が再発したときに、修復する方法が身につかなくなる。
6.支援の最終的な機能は、診断するためのスキルをクライアントに伝え、建設的な介入を行うことだ。そうすればクライアントは自力でもっと状況を改善していくことができる。
P113
支援というものの核心を成す考え
1.状況に内在する無知を取りのぞくこと
2.初期段階における立場上の格差を縮めること
3.認識された問題にとって、さらにどんな役割をとるのが最適化を見極めること
問いかけの形を選択する @121
1.純粋な問いかけ
2.診断的な問いかけ
3.対決的な問いかけ
4.プロセス指向の問いかけ
p235
支援関係における7つの原則
原則1.与える側も受け入れる側も用意ができているとき、効果的な支援が生じる
・支援を申し出たり、与えたり、受け入れられたりする前に、自分の感情と意図をよく調べること
・支援したいとか、支援されたいとかいう自分の欲求がよくわかるようになること
・支援しようという努力が快く受け入れられなくても、腹を立てないこと
原則2.支援関係が公平なものだと見なされたとき、効果的な支援が生まれる
・支援を求める人は気まずい思いをしているということを思いだそう。だからクライアントの本当の望みは何か、どうすれば最高の支援ができるのかを必ず助けること
・あなたがクライアントなら、何が役に立ち、何が役に立たないかというフィードバックを支援者に与える機会を探す
原則3.支援者が適切な支援の役割を果たしているとき、支援は効果的に行われる
・まずは調べてから、どんな支援の形が具体的に必要とされているかを推測すること
・支援する状況が続く中で、あなたの演じている役割かがまだ役に立つものなのかどうか、定期的に調べる
・あなたがクライアントなら、もはや助けられていないと感じたとき、恐れることなく支援者にフィードバックを与える
原則4.あなたの言動のすべてが、人間関係の将来を決定づける介入である
・支援者として役割の中では、人間関係に与えそうな衝撃によって、自分の言動をすべて評価すること
・あなたがクライアントなら、やはり自分からあらゆる行動がメッセージを伝えていることを時間する
・フィードバックを与えるときは、現実の姿の記述に留めるようにし、判断は最小限に抑えること
・不適切な励ましは最小限にすること
・不適切な修正は最小限にすること
原則5.効果的な支援は純粋な問いかけとともに始まる
・純粋な問いかけからはじめる
・求められた支援がどれほどお馴染みのものに聞こえても、これまでに一度も聞いたことがない、まったく新しい要求だとして考えよう
原則6.問題を抱えている当事者はクライアントである
・関係を築くまでは、クライアントの話の内容に関心を示しすぎないよう注意すること
・あなたがすべて知っていると思う問題とどれほど似ているようでも、それは他人の問題であって、あなたのものではないことを絶えず思い出す
原則7.すべての答えを得ることはできない
・支援の対象となる問題を分かち合う
プロセスコンサルテーション 10の原則 p287
1.絶えず人の役に立とうと心がける
2.今の自分が直面する現実からけっして遊離しないようにする
3.自分の無知を実感する
4.あなたがどんなことを行っても、それは介入、もしくはゆさぶりになる
5.問題を自分の問題として当事者意識を持って受け止め、解決も自分なりの解決として編み出していくのは、あくまでクライアントだ
6.流れに沿って進む
7.タイミングがすごく大事
8.介入で対立が生じたときには、積極的に解決の機会を捉えよ
9.何もかもデータだと心得よ。誤謬はいつも起こるし、誤謬は、学習の重要な源泉だ
10.どうしていいのかわからなくなったら、問題を話し合おう